十角館の殺人が漫画になってた!この作品の評価が分かれる理由について考えた
2023/08/08
世の中に「新本格ミステリ」などという言葉を作ることになった作品・・・綾辻行人先生の「十角館の殺人」がコミックス化していました。
ヤバイです。
すでに原作を読んでいる人なら「え、どうやって漫画にすんのよ」って疑問だと思うんですが、まぁ・・・「なるほど~」という感じで見事に「漫画ならでは」の解決案を見せてくれていました。
これ、実写化だったら無理だろうなぁ。
さてさて「十角館の殺人」ですが、僕が最初に読んだのは高校生の頃。
それでも初出からは10年近く経っていて、僕が手にしたのは文庫版だったのですが・・・やっぱり相当な衝撃を受けました。
・・・でもこれ、今日のレビューサイトとかだとそこそこ低い評価も多いみたいでビックリ。
ただまぁ、なんとなくその理由もわからんでもないのです。
それは決してこの作品が稚拙であるとか、そういうことではないんですけどね~・・・。
まぁとにかく「小難しい推理小説の名作が、漫画で読めるようになった!」というのは喜ぶべきところで。
今まで「存在は知っていたけども読む時間がなくて~」みたいに取り組めてなかった人は一度読んでみてほしいかなと思います。
特に金田一少年とかコナンくんとかが好きな人ならハマれると思うんすよね。
逆に既に読んで衝撃を受けた事がある人は「えっえっ、あの”トリック”どう表現するん?」っていうのを楽しんだらいいと思うw
十角館の殺人とは?
十角館の殺人は綾辻行人先生による推理小説「館シリーズ」の初作品です。
角島という離島で行われる殺人事件と、本土にいる探偵の推理とが平行に行われていく作品で、「一文で全てをひっくり返してくれる」という煽りがよく使われるとおり、僕も初めて読んだ時には本当にひっくり返ってソファから転げ落ちました。(ちょっと盛った)
それまでに推理小説というものをしっかり読んでこなかったというのもあるんですが、僕はこの作品の仕掛けに本当に感動しまして。
後の館シリーズも面白く、サクサクと読ませて頂きました。
オススメするのがめちゃくちゃ難しい作品
推理小説のオススメっていうのは本当に難しくって。
「この作品、トリックがこういう内容ですんごい面白いから見てみて!!」なんて言われて読んでも絶対に面白いハズがなくって・・・どうにかして確信に触れずにオススメしなければいけないわけですよ。
まぁ・・・推理小説の面白いところって「いかにトリックを暴くか」だけではないと思うんですけどね。
僕なんかトリックを完全にネタバレされたうえで島田荘司先生の「占星術殺人事件」を読みましたけどめちゃくちゃ面白かったし。
ただ、この十角館の殺人に関してはそういうわけにはいかないので・・・もうこれは読んでもらうしかない。うん。
なぜ評価が分かれるのか?
さて、前述したとおり、レビューサイトなどではこの作品の評価が低いこともあって僕はちょっと「え~・・・」って感じなのです。
なんでも「過大評価されている」とか「作品が薄い」とか、悪い評価の中にはそういう意見が目立ったんですね。
でも・・・それは仕方ないというか、、、僕はこれ「ゴールデンボンバーと同じ」じゃないかなーと思うのです。
またこれかよ・・・となる らしい。
この作品の一番のポイントは件の「一文」にあり、そこに向かって小説も作られています。
なので、その一文でひっくり返るかどうか・・・っていうのが評価を左右すると思うんですね。
僕はそれまでにこの手の推理小説を読んでこなかったというのもあって、純粋に作者の思惑通りに誘導(ミスリード)されることができました。
ですが、目の肥えているミステリファンにとっては「これ、他の作品でも使われてたトリックやないかい」「またこれか・・・」となってしまうのだとか。
でも、この作品が現在まで語り継がれる名作である所以は、そのトリックが(初出ではないにせよ)ミステリファンに衝撃を与えたからに違いないと思うのです。
おそらくはこれに感動した人が、どうにかしてこのトリックを自分の作品にも生かしたいと思い、結果的にあちこちの作品で見られるようになってしまったのではないでしょうか??
ゴールデンボンバーが売れ出した頃、ライブハウスには似たようなエアバンドが多数出てきたそうです。
箱の関係者の中には「またか・・・」とウンザリする方もいたそうですが、結局はゴールデンボンバーから「真似したくなるほどの衝撃」を受けた人が多かったことを意味しているわけですよ。
それと同じなんじゃないですかね・・・?(知らんけど)
1987年にこの小説が初めて世に出たという事実、その時に多数の読者がこのトリックに感動したという時代背景も加味して評価してほしいところ。
過大評価と言われる理由
ちなみに、そういった評価があるにも関わらず、いまだに「ミステリファンなら絶対に読むべき一冊!」みたいな感じでオススメされたりするので、読み手にとっては「そんなすごい作品なのか・・・超楽しみ!!!」と、読む前の期待が高まってしまう作品だったりします。
結果、「言うほどすごかったか・・・?」みたいな。
でもそれって「今から面白いことします」みたいな前置きをしてギャグをやるようなものなんですよね・・・。
本作ってそういう「絶対的にすごい作品」なのではなくて、要はある種の基点になった作品という意味でのすごさを持っている作品なんですよ。
ここで革命が起きた、的な。
ああー・・・もう、なんて言ったらいいの?
すごく文才のない自分がモドカシイのですが、、、ほら・・・ビートルズとかがそうですよ。
「ビートルズっていうすごいバンドがいてさ!!」って言われても、今の音楽ってほとんどがそのレールがあった上に成り立っているものですから、改めてきいても「ビートルズどこがすごいん?」ってなりがちじゃないですか。
お笑いとかもそう。
僕ら世代だとダウンタウンってすごく衝撃だったんだけど、たぶん今の若い子たちにしてみたら「ダウンタウンが作ったお笑いのベースで育ったお笑い芸人が作る笑い」というところに慣れているわけで、ダウンタウンのすごさってイマイチわからないと思うんです。
要はそういう作品ってこと!
おわりに
評価サイトだと作者の文章の書き方を批判している人や、キャラやトリックの薄さ、なんだったら動機付けが適切(論理的)か、リアリティがあるのか、そもそも作者は読者に対してフェアかアンフェアか・・・みたいなところに言及してる人もいました。
まぁ、わからんでもない。
というか、「ミステリ」そのものに敬意を払っている人ならばこそ、そういう評価の仕方もあるのかもしれません。
ただ・・・僕はもっと単純に、純粋にエンターテインメントに触れる感じで楽しんでもいいのかなー?って思うんですよね。
僕自身、社会人になってから発売された「暗黒館の殺人」の時には「綾辻先生、次はどう僕らを楽しませてくれるんだろう?」って、ただただワクワクして新刊を手にしましたし。
とはいえ、エンターテインメント作品の楽しみ方も人それぞれです。
リアリティに欠けるものは絶対に楽しめないという人もいれば、「小説だからね」という楽しみ方ができる人もいて。
どっちが正しいとか、どっちが優れているという話でもないと思います。
なのでこの作品は、細かいことは気にしないで楽しめる人向けのミステリ・・・って感じでサックリ漫画で読めるのが逆に適しているのかもしれません。
2023/08/08