映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」を観た感想
2020/06/27
今さらですが、映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」を観ました。
タイトルのファウンダーは「創設者」という意味で、マクドナルドの創設者であるレイ・クロックのサクセスストーリーを描いた作品です。
いきなりですが、ちょっと考えてほしいことがあります。
マクドナルドと聞いて、あなたはどんなことを思い浮かべますでしょうか。
マクドナルドに対してどんな印象を持っていますか?
まずい?
粗悪?
好きと言ってるヤツの気がしれない?
でも・・・あちこちにお店があるし、誰しも一度は利用したことがある飲食店です。
ランチ時なんかは席が空いてないほどには混んでるんですよ。
何気にマクドナルドって
「一般的な”味”に対する評価は低いのに、めちゃくちゃに流行ってるお店」
っていうところで、店舗経営者やマーケティングを学んでいる人にとっては「すごいお店」だったりするんですよね。
※ちなみに僕の印象は「劇的に美味いというわけではないのに、なぜか定期的に行きたくなる麻薬のようなお店」というものでした。
数々のグルメバーガーを食べてきましたけど、最終的には「(諸々考慮して)マクドナルドのビッグマックが一番じゃね?」ってところに行きつきましたし・・・。
そんなマクドナルドを創った・・・もとい、マクドナルドを世に広めたレイ・クロックの物語を、”レイ・クロックを悪者にする”形で描いたのが本作だったりします。
おそらくは前情報なしで観た一般消費者、経営者、レイ氏の半生を知っている人・・・などで捉え方が大きく違った作品だったんじゃないかな~。
以下、僕が観た感想をダラダラと書いていきます。
レイ・クロックって何者?
感想の前に、前情報として「レイ・クロックって誰やねん。何者やねん。」というのを書いておきますね。
もともと色々な職を転々としていたレイ・クロック氏。
40代に差し掛かる頃からミルクセーキ(シェイク)のマルチミキサーを販売する営業マンとして、国中のダイナーを巡るようになりました。
50代になった頃、カリフォルニアのとあるダイナーで画期的なシステムに出会い、惚れこみ、これで一山当てたいと考えるようになります。
そのお店こそが「マクドナルド」でした。
その頃のダイナーは基本的に、アメ車でお店に乗りつけて、ローラースケートを履いたお姉ちゃんがオーダーを取りに来て・・・っていう「アメリカン・グラフィティ」のあの世界だったわけです。
手間だし、ミスは起きるし、人件費がかさんで料理も高額になるし、料理はなかなか出てこないし・・・まぁ、不便だったわけですね。
一方レイ氏がカリフォルニアで出会ったお店、マクドナルド兄弟が経営する「マクドナルド」は1950年代当時から”今日のマクドナルド”のような無駄のない店内システムが出来上がっていました。
マクドナルドでは自分でレジに並ばなければならない手間こそあれ、顧客はオーダーしてすぐにアツアツのハンバーガーを受け取ることができ、何より低価格で食事をすることができたのです。
※特に当時のキャラクターが「スピーディ君」だったことから、いかに早く食事を提供できたのかが伺えますね。
そこに目を付けたレイ・クロックは「この素晴らしいシステムを全国展開すべきだ!」と考え、マクドナルド兄弟を説得します。
結果、現在のマクドナルドは知らない人はいないほどの世界的な企業になりました。
つまり、マクドナルドが世界に進出していくその裏で(表で?)活躍した人物がレイ・クロックだったというわけです。
レイ・クロックは果たして”悪者”なのか?
映画ではレイ・クロックがとても傲慢で、自分の夢のために他者の気持ちをまるで顧みない冷酷な人物のように描かれていました。
実際のレイ氏が悪者だったのか?非道な人間だったのかは僕らはリアルタイムの彼を観ていないので知る術がありません。
もちろんマクドナルド兄弟の店、経営権を買い取り、その目の前に競合店を建てるなどは事実だったので、そういう点を掻い摘んでいけば「レイ・クロック=悪者」という構図ができあがるのは当然のことだろうと思います。
松下幸之助さんみたいな美談ばっかりでもないだろうしね。
ただ、僕はこういう風にも思うんです。
もしレイ氏がいなかったら、今の世の中はどうなってたんだろう?って。
「みんなに知ってもらわないともったいない」と感じたのかも。
マクドナルドの生みの親であるマクドナルド兄弟は、自分たちの経営する直営店への関心は強かった反面、店舗を拡大することには消極的でした。
※厳密には以前に一度フランチャイズ化に失敗しており、自分たちの管理下に置けないお店を信頼できなかった・・・という感じ。
おそらくレイ氏にとっては「これで稼げる」というよりも、「この店だけで完結させてしまうのはもったいない!」という想いが強かったのではないでしょうか??
・・・少なくとも、僕だったらそう感じてしまったはず。
自分の目の前で、観たこともないようなシステマチックな作業をみる機会があったら?
それが広まることで世の中がもっと便利になるのなら?
そのサービスをそこだけで終わらせてしまうのはもったいない!
みんなに知ってもらいたい!!
・・・という使命感に駆られてしまうのは、起業家精神がある人ならば普通のことと言えるかもしれません。
僕らが良く知る「マクドナルド」が生まれなかったら・・・?
結果、レイ・クロックはマクドナルド兄弟に「このシステムでチェーン展開していこうぜ!」という話を持ち掛けていき、半ば強引に(とはいっても最初の頃はちゃんと同意の上で)店舗展開を進めていきます。
映画によればその店舗展開にかかるコストやら自分の取り分やらで折り合いがつかず、レイ氏は不義理を果たすことになるのですが・・・僕らからしてみたらそのおかげで今日マクドナルドを堪能することが出来ているわけなんですよ。
もしマクドナルド兄弟にレイ氏が干渉しなかったのなら、きっとマクドナルドハンバーガーはここまで世界的に名の知れる企業には成長していなかったのではないかと思われます。
となれば、そのシステムを参考にして展開している多くのファストフードチェーンすら生まれていなかった可能性もありますよね。
今でこそマクドナルドを「親の仇か」ってぐらい意識しているバーガーキングだって、もともとは創業者がマクドナルドを訪れて「インスタマシーン」なるグリラーをゲットして・・・という歴史があるようですし。
(この辺は僕の知識が足りず、曖昧だけど、、、)
過度なチェーン展開は、もしかしたらマクドナルド兄弟にとっては「余計なお世話」だったのかもしれません。
でも、世界という観点で見れば、マクドナルドのグローバルな店舗展開はレイ・クロックによる「功績」だったとも言えるのではないでしょうか。
パクろうと思えばパクれたのでは?
・・・と、いうかですよ。
レイ・クロックほどの手腕があれば、そのシステムに目を付けた時点でそのままパクってビジネス展開をすることだって出来たと思うんです。
マクドナルド兄弟に内緒で、たとえば隣町とかに同じようなお店を作るところから始めて・・・って。
それをしなかった理由・・・それは、映画のレイ氏の言葉を借りるなら「マクドナルドという名前が必要だった」から。
「マグダーナルズという響きがいいねん。クロックスじゃアカンねや。」みたいな感じだったかな?うろ覚えだけど。
※でもCROCSって名前で成功している企業もあるんだよなぁ
これは少なからず「レイ氏からマクドナルドへの敬意」だったのではないかと僕は思うのです。
素晴らしいシステムを作り上げたのは「マクドナルド」であって、決して「クロック」ではなかったわけですから。
だとすれば「冷酷な金儲け主義のおじさん」という印象も少しは払拭されるのではなかろうかと思うのですが・・・どうなんでしょ?
映画の感想
映画自体は名優マイケル・キートン氏がレイ・クロック役を務めており、個人的にはすごく「ハマり役」だなと思いました。
この人、1980年代のバットマンだった人なんですよね。
正義のヒーローが”いい悪役づら”をしてくれてました。
そして登場人物のほとんどがオジサンっていう映画なんですけど、内容が内容だけに終始面白かったです。
得にレイ・クロックがマクドナルドに出会って「これは革命だ!」と沸きあがっていくくだりは見ているこちらもワクワクしましたね~。
なんか、、、よくわかるんですよ、あの気持ち。
「こんなに素晴らしいものなら、もっと多くの人に体験してほしい!そのためには自分に何ができるか・・・」っていう想いと、それができない葛藤。
結果、普段からそのことばかり考えてしまって、本職の仕事が手に付かなくなる・・・っていうw
あのシーンは妙にリアルだったなぁ・・・。
こういうね、新しい「やりたいこと」が見つかってしまった時は一回何らかの形に落とし込まないとダメなんですよね・・・。(経験談)
個人的に印象に残っているシーンは、我慢ができなくなったレイがマクドナルド兄弟の元を三度訪れて、その素晴らしさやチェーン展開の必要性をプレゼンするところ。
本当にマクドナルドのシステムに惚れこんでいるんだな~っていうのが伝わってきて良かったです。
その時の劇中のセリフ、
マクドナルドは新しいアメリカの教会になる
は(本当にレイ氏が言ったかどうかはさておき)名言でした。
日曜だけじゃなく、毎日いつでも家族が集える場所・・・2020年の今、本当にそういう場所になってるよなぁ。
このプレゼンは僕の心だけでなくマクドナルド兄弟の心も動かしたわけで・・・必見ですね~。
誰が「ファウンダー」なのか?
映画のタイトル「ファウンダー」はいったい誰の事を指しているのか?というのも、なんとなく皮肉が効いています。
普通に考えたら、世界で誰もが知るマクドナルド・コーポレーションを創設したレイ・クロックのことだろうと思いますよね。
だってこの映画の主人公がレイ氏なんだし。
でもその企業が生まれるためにはそのシステムの根幹を生み出したマクドナルド兄弟という創設者がいなければ成り立ちません。
結局のところ「誰が(何を以って)ファウンダーやねん」みたいなのがこの作品のテーマだったのかもしれないですね。
おわりに
レイ・クロックとマクドナルド兄弟、どっちが正しかったのか?なんてことを考えるのは野暮というものでしょう。
この映画を一般的な目線で観れば、レイ・クロックが天才ディック・マクドナルドのアイデアを横取りして金儲けに走った・・・っていう感じに映ったとしてもおかしくないと思います。いやむしろその通りなんだけど。
そういう人間のサクセスストーリーと思えば、不愉快に感じる人もいることでしょう。
ただ、やっぱりレイ氏はマクドナルドというビジネスに心底惚れていたんだと思うんですよね。
その品質を守るために色々提案したり、品質を守れなかった店の責任者を叱責したりしてたし。マクドナルド兄弟への敬意もあったと思うし、最大の譲歩はしてたんじゃないかなと。
まぁ、その辺の感じ方は人それぞれで、いろんな捉え方がある作品だとは思います。
今回の記事は「僕はこういう風に感じたよ!」というお話でした。
・・・奥さんを差し置いて、フランチャイズ店の人妻と再婚した話は全然共感できなかったけども!!
2020/06/27
Comment
こんにちは
若い頃、もう30年程前にアメリカを何度か訪れてるんですが、シアトルでスターバックスに、ニューヨークでディーン&デルーカにはじめて入ったとき、おお!これは日本でやればめちゃくちゃはやるぞ!と興奮したのを思い出してしまいました。
と言っても、アメリカではもう十分にはやってたので、そりゃそうだよねって感じではあるんですがw
他にも、外国に行ったときに印象に残った業態のお店というのはあるけれど、これは!と思うものに出会ったとき、飛び抜けたエネルギーと情熱を持ってやり遂げられるのって、やっぱり一部の人なんでしょうねぇ。
そしてそういう人って、ジョブズなど有名ですが大体一癖あるような人だったり。
ちなみにハンバーガーは、普通のダイナーで出てきたハンバーガー(バラバラに出てくるやつ)がとてもおいしかったのが印象に残ってます。
他のアメリカの料理が口に合わなさすぎたというのもあるのかもしれませんがw
Lakesterさん
こんにちは!コメントありがとうございます。
>これは日本でやればめちゃくちゃはやるぞ!と興奮
うわ~わかります!
僕もクリスピークリームに出会った時はそう思いました。
アメリカで流行っていたとしても、日本に入ってきてないわけですからね。
日本に持ってくれば必ず流行るというわけでもないですし・・・(シナボン然り、ロッキーチョコレート然り、、、)
>飛び抜けたエネルギーと情熱を持ってやり遂げられる
そうなんですよね。思うだけなら誰でもできるのかもしれない。
でもそれを一歩踏み出せる人は数少なく、さらにやり遂げられるのは一握りいるかいないか・・・。
逆に癖のあるような人間でなければやり遂げられないということなのかもw
>他のアメリカの料理が口に合わなさすぎた
なるほどw
僕がアメリカに初めて訪れたのは14年前だったんですが、「アメリカの料理はまずい」というのを目の当たりにしたのは某ビュッフェレストランだけでしたね~・・・。
あとは基本的に美味しかったような、、、
ちなみにマクドナルド兄弟のハンバーガーは本当に美味しかったみたいですねw
今のマクドナルドとは味わいが雲泥の差だったとかなんとか聞きますが、まぁ・・・どこまで本当だったかは実際に食べていないので何とも言えないところです。
おはようございます
とても興味深く読ませて頂きました
元中の人として読みましたが、ほぼ自分が聞いたり教わった事と相違ないと思います。
社歴16年位でしたがアルバイト採用、面接から毎日の資材発注、店舗運営と毎日が忙しく過ぎた思い出があります。
レイAクロックの次、ターナー氏の世代ですが、日本に於ける基礎を築いた時代でした。
>毎日いつでも家族が集える場所・・・2020年の今、本当にそういう場所になってるよなぁ。
マックに行くと美味しいものが食べられ、特別な何かがある!
と当時の子供に思ってもらう事により、その子供が将来大人になった時に自分の子供を連れて行きたい!
と思える様に仕事をするのが、一番の目標でした、、、
ご存知の様にハンバーガー大学なんてものがあり、ベーシックなコースでマニュアル等基本を習得し、
次のコースでは、考え方や育成等を学びました。
10日間位カンズメでハードな毎日でしたが、最終日に上位3名の表彰があり1位には金のcross
,2,3位にはシルバーのcrossのボールペンが貰えました。(Mのロゴ入り)
退職した者が他社で持ち出したマニュアルを活用しようとした事も多々ありましたが
数字的な物は真似出来ても、人材育成は真似出来ずに終わったなんて話は枚挙に厭わないです。
結局は人をトレーニングするのと評価するのは大変で、直ぐには真似出来なかったと言う事でした。
この辺の良き思い出は⁈勤続○○年で頂いた金のロゴ バッジと共に胸の奥に閉まってあります。
最後にコレ面白そうなので、是非見たいです〜。
super cubさん
おはようございます!コメントありがとうございます。
そういえば元「なかのひと」でしたね!!!
なかのひと目線だと、また違って映るものがあるかもしれません。ぜひ見てほしい!!
※映画では若き日のターナー氏もレイの片腕として登場してました。
>マックに行くと美味しいものが食べられ、特別な何かがある!
なるほど~。
僕は子供の頃、やっぱりマクドナルドって好きでした。
「特別な何か」を感じていたのかはわかりませんが、ジャンキーでやみつきになる美味しさというのはやっぱりあったと思うし、何よりも家族であのお店に行くというのが楽しかったんだと思います。
そして今、やっぱり息子を連れてマクドナルドに行ってますし、息子もマクドナルドが大好きなんですよね。
ただまぁ、健康面などを考えると躊躇しちゃうんですがw
それでもやっぱり定期的に「行きたい!」ってなるなぁ。
>考え方や育成等を学び
こういった教育がしっかりしているというのは、特にチェーン展開するお店にとっては不可欠なことだと思ってます。
要は「理念の共有」ですね。
顧客って必要以上のサービスを受けたいと思っているわけではなく、そこのお店に期待している何かがあって、それを当然のように受けられることを期待しているんだと思うんです。
逆に言うと、それが叶わなかった時にすごく不満に感じるわけで。
そういった点は教育で補えると思うんですが、それをしっかりやれているというのはやっぱり素晴らしいんだろうなーと。
crossのボールペンいいなぁ!
僕もほっそいヤツ愛用してますw
>退職した者が他社で持ち出したマニュアルを活用しようとした事も
へえーへえー!!!!!
実は僕も飲食店をやろうと思った時に、妻が「学んでくるわ!」つってマックで3カ月ぐらいパートしてきたんですよ。
やっぱりシステマチックですごかったという印象でした。
ただ僕らがやりたかったことには使えませんでしたが・・・
そのシステムのうわべだけを見て真似しようとしてもそう簡単にできるものではなく、その本質に惚れこんでやりぬくことが出来たという点でもやっぱりレイクロックってすごかったんでしょうね!!
>crossのボールペンいいなぁ!
対外的に納品書にサインを貰ったり、何かの打ち合わせの時に百均のボールペンだと
見た目が悪いので、現在はスタッドラー、カランダッシュ、フィツシャー等のボールペンを使用しています。
ミニカーと同じで、文房具も収集しはじめたらキリがないかと⁈
フィツシャーのスペースペンって、Nasaで宇宙飛行士が使っているとの事で使いましたが
何故かインクが漏れYシャツの胸ポケットが青くなってしまい、それ以来引き出しの奥底にしまわれています。
先ほどスーパーでマジョレットの日本車コレクション!を発見しました、ダルマのセリカやらハイエース等、HWマニアでも唸ってしまいそうなラインナップで、コレ人気出そうな感じですね〜。
super cubさん
文具もキリがないでしょうね~・・・。
僕は今、昨年亡くなった義父が使っていたモンブランのボールペンを愛用しているんですが、見た目以上に使い心地が良くて・・・もう死ぬまでこれ一本でいいかなと思ってます。
惜しむらくは義父のネーム入りってところなんですよね・・・自分の名前ならまだしもw
>何故かインクが漏れYシャツの胸ポケットが青く
ああ・・・それは災難でしたね、、、
そういうことが続くとブランドの名前が堕ちていくんだろうなぁ・・・。
>日本車コレクション
実はこれ、僕も先月ぐらいから探してまして。。。
うちの地元ではみごとにセリカとハイエースだけが消えているという状況なのです。
コロナの渦中で地元のスーパーに息子と一緒に探しに行き、外出できずに鬱憤がたまっていたであろう息子が珍しく「これが欲しい!」となったのでFJクルーザー(青)を買ってあげた、そんな思い出のシリーズだったりしますw