「かさこじぞう」のじさまを憂う【なぜ笠は売れなかったのか】
小学二年生の教科書のお話の定番「かさこじぞう」。
最近の息子の宿題の一つとして、家でよく読み聞かせられてますw
あれは民話「笠地蔵」を1967年にポプラ社のむかしむかし絵本にて作:岩崎京子さんとしてリメイクしたものなんだそうですね。
たしかに僕が子供の頃に読んだお話は「かさじぞう」であって、「かさこじぞう」ではなかったような気がします。
さてこのお話、知らない人もなかなかいないとは思いますが・・・!
どういうお話かというと、年末に年越しのグッズを用意できなかったと嘆く老夫婦が、「せや、笠売った金で餅買うたろ!」いうて市場へ出かけ、全く売れずに帰る途中で雪をかぶったお地蔵様がいて・・・お地蔵さまに笠をかぶせてあげたところ、夜中にお地蔵様が餅やらなにやらをプレゼントしてくれた!というものです。
最終的には無欲なじさまとばさまが報われて、めでたしめでたし・・・となるわけですが、岩崎京子版のかさこじぞうは途中の描写がとても切なく描かれており、秀逸なのであります!!
じさまよ・・・なぜ年末に傘を売りに行った・・・
原典の「笠地蔵」ではどういう描写だったのかはわかり兼ねます(というか伝承レベルのお話だと考えると原典などなかった可能性もあります)が・・・岩崎京子版では以下のような流れになっていました。
- 年末に傘を売ろうと思い立ち、すげを編んで夫婦で笠を5つ作った
- 大年の市で売ろうと思うが、一つも売れなかった
- とんぼりとんぼり帰る途中、雪をかぶった地蔵様を発見
この、売れなかったというシーンの時に・・・「じさまは声を張り上げるも誰も振り向いてくれなかった」というような描写があるんですよ。
そこでじさまが「正月に笠を買う人なんていないわな・・・」と反省し、帰途に付く、と。
これがとても切ないというか。風情があるというかw
なんちゅーもんを小学生に読ませとんじゃい!
岩崎京子版のエモさ
他のバージョンだと「焚き木を売りに行く」とか「裏山の木を拾って売る」だとかもあるそうです。
たしかに僕が子供の頃に読んだヤツも確かにそんなんだった気がします。
で、じさまは市場で笠が売れなかった他の商人と物々交換して、焚き木の代わりに手に入れた笠を帰り道で惜しげもなく地蔵様にかぶせてやった・・・みたいな。
焚き木だったらまだね・・・切ってあったヤツを背負って行っただけかもしれないし、ましてや裏山の木だったらそんなに努力をしていなかったかもしれないけれども。
岩崎京子版はじさまとばさまが半日ぐらいかけてせっせとすげ笠を編んでるわけですよ。
「これで餅が買えるぞ・・・」とワクワクしながら。
その描写がね・・・もうたまらなくエモなのです。
需要と供給という基本の話である・・・
ただ、じさまが気づいたとおり・・・その場でどうしても笠を買わなければならない人などいなかったのです。
考えてもみれば、年の瀬という忙しい時に「よーし笠買っちゃうぞ」となる人なんて、滅多にいないわけですよ。
つまり、需要がないところに商品担いで行っちゃった・・・っていう。
商売の基本の「き」が出来てなかったってことですね、、、
なんですかね・・・うまい例えが思いつきませんが、、、
南国の島にスキーウェアを売りに行くようなもの、でしょうか。
特にそこにお店をデーンと構えて売っている等であれば話は別ですけども。
たまたま必要になって「そういえばあそこに笠を売ってるお店があった」つって来てくれる人もいるかもしれない。
でも、じさまのように思い付いてすぐ大年の市(おそらく今でいうフリマとか出店のような簡易的な市場)に売りに行くと考えたら、本当に偶然そこで「すげ笠を買おうと思ってきたんだけど、たまたま誰か売ってないだろうか」って人に出会えなければならない、と。
つまり需要があるところに商品を持っていかなければ売れるわけがないのです。。。
じさま、御年いくつか存じませんが、ようやくそこに気づけたわけですよね。
これで翌年以降はもう安泰かと思われます!!
おわりに
このお話・・・要は「無欲で他人に良いことをすれば、自分にも良いことが返ってくる」っていう、仏教の教えのような感じのお話なんですよ。仏教知らんけど。
実際にこの老夫婦がどういう正月を迎えたのかはわかりません。
本当に地蔵様が来てくれたのでしょうか?
もしかしたら、これだけ人の良さそうな人達だから、近所の友人たちがこっそり「じょいやさ、じょいやさ」とお餅やらなにやらを恵んでくれたのかもしれませんが・・・。
※それか、もはや幻覚を見ていた可能性もあるかもです。
いずれにせよ、これが日本の道徳であり、綺麗な生き様を見せられた感じがしますよね。
自分の欲のために安易に犯罪に走ってしまう人たちには今一度かさこじぞうを読んでもらって、じさまが「お地蔵さまに笠を全部あげてきちゃったよ」という報告にも嫌な顔一つせず「それはええことをしたのう」と言えたばさまの1/100でもいいからそういう気持ちを持ってほしいなと思いました。(唐突)
追記
ち・な・み・に!!
需要と供給がどうのこうのいう話をしましたが・・・その日は吹雪いていたり、お地蔵様が雪をかぶっていたりというシーンがあったのを思えば、実は笠の需要はあったのかもしれません。
となると売れなかった理由は・・・
- じさまの笠に致命的な欠陥があった(デザインやニオイ、価格など)
- そもそも市場に来ている人は吹雪になることを見越していたので笠を持っていた
- じさまが(体力的に)大きな声を出せず、気づいてもらえなかった
などなども考えられそうです!!