静浜市の設定を作り続けたお父さんは全然キモくないだろ!という話
2021/08/23
奇跡体験アンビリバボーという番組で、10数年に渡り「架空の都市の地図」を作り続けたというお父さんが紹介されていました。
パピーが小学生から大学生になるまで描き続けてきた
手書きの架空都市計画の資料を
結婚してから初めて見せてもらったマミーが感動して
どうにかしてこの地味な才能を広めたいと
色々番組に投稿してるらしいが空振りみたいなので
娘の私が拡散しとくな(イケボ pic.twitter.com/6ZylX1mSiz— 仲村しんご (@YorozuyGintamam) 2017年11月11日
その地図は設定があまりにも細かく、専門家が唸るような内容だったそうなんですね。
僕は自分も昔こういう妄想をすることがあっただけに、ここまで細かく造りこまれていたことに単純に感動しました。
・・・が、テレビで娘さんが「キモイ」と言っていたように、こういう常軌を逸した趣味って一般的には受け入れられない感じがありますよね。
現に僕の妻も「普通じゃないよね」とか「一般的には気持ち悪いって思われるよね」という感想を述べていて、ちょっと言い争いになったほどですw
でもこれ、冷静に考えたら全然キモくないんですよ。
もし「うわっ・・・気持ち悪い」とか思ってる人がいたらちょっと一考して欲しいです。
なぜマニアックになるとキモがられるの?
なんでこのお父さんの趣味を「気持ち悪い」と思ってしまうのか・・・というと、やっぱり常軌を逸した内容だからだと思うんです。
テレビで紹介されていたのは静浜県の県庁所在地である静浜市という架空の都市の地図・・・だけでなく、その都市計画や人口統計など、とにかく「本当にその都市があるんじゃないか・・・?」ってぐらいの資料でした。
空想都市を思い描くことはあっても、それをそこまで落とし込むことって・・・なかなかないですよね。
要するに常人には想像できない趣味だった・・・というわけです。
人間って、自分が想像できないようなことを目の当たりにすると、恐怖を感じるんでしょうね。
「えっ、なにこれ・・・こわっ・・・」みたいな。
なので普通はやらないようなことをやっている人がいると「なんでそんなことやってるの・・・?怖いんだけど。キモイんだけど・・・」ってなっちゃうんじゃないかなと。
(あくまで僕の想像にすぎませんが)
小説を書く感覚
当の地図の作者さんは番組で「小説を書く感覚ですよね~」と言っていたんです。
僕は小説家ではありませんが「ドメスティックな彼女」を読んでいるので小説家がどんな感じかは知っています。(キリッ)
フィクション小説って、結局のところは空想世界を活字に起こしたものじゃないですか。
その文章表現だけで読者に世界をイメージさせなければなりません。
その作品描写がどれだけリアルになるかは・・・設定の詳細さがものを言うと思うんですね。
これって小説だけじゃなくて、実は漫画とか映画でも同じことが言えます。
例えば有名な「ワンピース」なんて、作品に関わってこないような裏設定がものすごく綿密に作られているんです。
だからこそファンが熱狂的になるわけで。
逆に設定がペラい漫画とかって、すぐにわかるんですよね。
もしこの空想の都市計画を見てキモいと思った人がいたとして、これが小説のプロットなんだとしたら・・・今度はどう思うでしょうか??
表に出なかったからキモイ?
僕は小学生の頃、ノートに漫画を描いているような少年でした。
で、休み時間になると友達が「見せてー」なんて言って机のまわりに集まってくる・・・っていう。
小学生のうちはこれを続けていたんですが、中学校にあがったある日、同じクラスの女子に言われたんです。
「まだそんなオタクくさいことやってんの?」って。
当時はそれがすごく恥ずかしくて・・・もうみんなの前で漫画は描かないと心に誓ったのでした。
でもね・・・その子だって普通に市販の漫画は読んでたんですよ。
なんでプロが描いた漫画なら許されて、僕が描く漫画は「オタクくさい」とバカにされなければならなかったのか・・・。
これってプロ野球選手を目指して毎日素振りを続ける野球部員に対して「まだそんな叶いもしない夢を見てるのか」って言ってるようなもんじゃないですか。
同様に、小説家だって売れるまでは何本も何本も小説を書いて、それを押し入れとかにストックしているわけですよね。
小説家としてデビューできたらキモくなくて、ずっと目が出なかったらその作品があるということがキモくなってしまう・・・?
なんかすごく変じゃない??
やったこともないヤツが評価してんじゃねえ!と思った過去。
もう一つ、僕は大学生の頃に友達とバンドを組んでいて、何曲かのオリジナルソングを作っていました。
実際にその楽曲たちで小さい箱のステージに立ったこともあります。
同じステージに立った他のバンドの子たちは「いいよね!」とか「ドラムがワンパターンだよね」とか、正当に評価してくれるんです。
でも、自分で楽曲を作ろうともしない人に限って、オリジナルソングを馬鹿にしてくるんですよ!!クッソォ・・・。
これはまぁ、仕方ないのかもしれないけれど。
今回の空想都市の件もそうです。
もし、似たようなことをやったことがある人なら、「うわっ、すごい!!」となりこそすれ「気持ち悪い」という評価にはならないんじゃないかと思います。
逆に言えば、あれをみて「気持ち悪い」と言ってしまうのは「私は創造力に乏しい人間です」と言っているようなものなのよ。
(主観であり、そういう方がいることを否定するわけではありません)
プロはアマチュアの延長線上にある
僕は、どんな仕事であれ「プロ」として活躍している人は「アマチュアの延長線上」にいると思っています。
というのも、生まれながらプロだった人なんて誰もいないから。
プロゴルファーも、プロヴァイオリニストも、小説家も漫画家も映画監督だってそう。
ある時期を境にプロになったというだけで、その人たちだってその瞬間まではアマチュアだったわけです。
ではプロとアマチュアの違いが何か?っていうと・・・それを生業としてお金を貰っているかどうか、ですよね。
そしてお金を貰うからには、そのことについて突き詰められた人でなければなりません。
たとえば時計を買いに行ったとき、ショップ店員に何かを訪ねても「わかりませんねー」「よく知らないです」とか言われたら・・・そこにお金を落とそうと思いませんよね。
どちらかというと機能や歴史、利用シーンの提案が欲しいんじゃないかと思います。
そういった説明がしっかりできるのは、やっぱりそこを突き詰めた人間だからこそ。
「こんなに時計を愛している店員さんがオススメしているんだから間違いないだろう」とお客に思わせることが出来なかったら、お金を落として貰えないハズなんです。本当は。(実際には別に販売員がテキトーだったとしても売れるだろうけど)
もし今回のお父さんがファミレスの店長という仕事ではなく、たとえば漫画原作者とか、そういった都市設計のアドバイザーになっていたら・・・アマチュアの趣味を超えてプロになっていたら、やっぱり評価は違うんでしょうかねえ・・・?
おわりに
と、ここまで書いて気づいたんですが、別に誰もお父さんを気持ち悪いなんて言ってないんですよね。
娘さんがテレビで「キモイ」みたいなことは言っていたけれど、あれは愛がある発言だったわけだしw
※実際に拡散したのは娘さんだしね・・・。
なのでまぁ・・・万が一、ああいうのをキモいという人がいたら、ちょっと考えてね!っていうお話でした。
2021/08/23
Comment
ぼくもこの番組を観ていました。凄いですよね。これもう芸術の域ですよ。
ぼくはアート、中でもアウトサイドアートが好きなのですが、観たときの衝撃は同種のものでした。こういう誰にも頼まれていないのに、とんでもない創造物を作っちゃう人をぼくは信じられるというか、本物だなと感動してしまいます。正確には覚えていないのですが、嘗て三島由紀夫が言った「動機のある犯罪よりも動機の無い犯罪の方が、逆説的に根の深い動機を感じる」みたいなもんで、ぼくにはコンセプトのある芸術よりも本人にも動機やコンセプトが分からない、ただただ作りたくて作ったんだ、って作品の方が、実はその人間の本音である深層心理にダイレクトにガチーンと直結した嘘のない作品のように感じます。
管理人さんがこの番組を観て感動したと仰っていて、何故かぼくが嬉しくなってしまいコメントさせて頂きました。
でも少し、管理人さんもその気がありますよね。
すいません、訂正箇所がありました。
×アウトサイドアート→〇アウトサイダーアートの間違いでした。
ぼくの勝手な思い込みですが、シュヴァルの理想宮やその筋の巨匠ヘンリーダーガーの作品は管理人さんも気に入るのではないかなと思っています。
HOT5さん
コメントありがとうございます!
あっ、そうですね。あれはたしかに芸術なのかも。
しかも本当に「誰にも頼まれていないのに」、自分の中だけであれだけの物語を完結させてるっていうのがすごくアートですよねw
逆に言うと、アレを本人が何かしらの形としてお金に変えようとしていたら・・・みんなの興味はここまで湧かなかったのかも。
三島先生のお言葉はちょっと怖すぎますが・・・「コンセプトのある芸術よりも本人にも動機やコンセプトが分からない、ただただ作りたくて作ったんだ、って作品の方が、実はその人間の本音である深層心理にダイレクトにガチーンと直結した嘘のない作品のように感じます。」というのはすごく共感できました!
だからこそ「常軌を逸している」「変態的」っていう評価になるんでしょうけどねw
>でも少し、管理人さんもその気がありますよね。
えっ・・・なんのことでしょうw
>シュヴァルの理想宮やその筋の巨匠ヘンリーダーガーの作品
お恥ずかしながら、シュヴァルの理想宮は初めて知りました・・・!
やばいですね、これ・・・!
オートリーヴという町をシュヴァルの気持ちになって歩いてみたくなりました。
こういう空想をする人は実は多いと思うんです。
でもそれを実際に形にする人、そして突き抜けられる人っていうのは少なく、やっぱり変態(いい意味で)なんだろうなと思いました。
幼稚園の参観&ホットウィールの参戦、お疲れ様でした。
そして、ぼくの若干キショいコメントに返信してくださりありがとうございます。
>オートリーヴという町をシュヴァルの気持ちになって歩いてみたくなりました。
こういう言葉がさらっと出るところが素敵ですね。
管理人さんは、いつも鼻歌なんか歌いながらスキップで移動してらっしやるような、自由な(もちろん精神的にという意味で)感じがしていいなぁと思います。
カルフォルニアスタイルやなぁ〜。
Hot5さん
いや全然キショいコメントなんて思いませんでしたw
ただ・・・
>いつも鼻歌なんか歌いながらスキップで移動してらっしやるような、自由な(もちろん精神的にという意味で)感じ
これはないですw
なるべく楽観的に生きたいとは思っていますが、結構ネガティブに落ち込むことも多いので^^;
シュヴァルの件は、歩きながら石を拾い集めて・・・というエピソードを見て、ちょっとでも同じような気持ちになれたら楽しいかなぁ・・・とw