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脳に格差があるとして、どうするのが正解なのか?「貧困と脳」の感想

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話題の新書、「貧困と脳」を読了しました。
ひどく絶望する内容ではありましたが、世の中のすべての人が「理解すべきこと」が書かれていると思います。

内容を簡潔に説明すると、僕らが「バカ」「無能」「ポンコツ」と断じてしまう人たちは脳の機能(場合によっては脳障害)によってそうなっている可能性があるということ。
そして、それは誰にでも後天的にふりかかる可能性があるということ。

もし、明日突然「スケジュールの管理ができない」という状態になってしまったら?
他の部分は何ら健常であるのに、そこだけがどうしてもできない。

たとえば四肢の欠損であれば周りからみても明らかにハンデキャップであるということがわかる。
けれど「仕事はそつなくこなせるし、体も健康そのもの。なのに今まで出来ていたはずのスケジュール管理がどうしてもできず、約束をすっぽかしてしまう(約束をした覚えもない)」という状態になってしまったら・・・??

こういった内容が、脳梗塞による高次脳機能障害を患ったノンフィクションライター鈴木大介氏の実体験と、著者が過去に取材を重ねてきた貧困に苦しむ人たちの話の照らし合わせで真実味を持って書かれている本なのであります。

とにかく絶望した

本書の内容はもちろん医学的な見地であるとか、そういうエビデンスがあるということではなく・・・あくまで鈴木氏が患った症状と、彼が出会った貧困者たち(セックスワーカーのシングルマザーなど)の症状が似ているというだけです。
なのでこれを以って全てを「脳の機能が原因だ」と決めつけてしまうのは些か早計かもしれません。下手したら陰謀論かもしれない。

・・・でも惹き付けられて仕方ないんですよ。

なので、あくまでこれを真実であるという仮定でお話を進めますが・・・とにかく絶望です。

何が絶望かって、自分に置き換えてみればわかりやすいですよね。
特にこれまで何の不自由もなく仕事をバリバリこなしてきた人であれば、明日急に「いつも通りに家を出たのに遅刻していた」みたいな状態だったら・・・?
そしてそれが全く改善できない、理由もわからないという状態だったらどうでしょうか。

まわりからは「もうちょっと早くに家を出る努力をしたら?」とか「夜遅くまで起きてるんでしょう?」とか言われるけれど、そんなこともなく。
今まで通り、夜ふかしもせずに就寝し、目覚ましの鳴る時間に目覚め、準備をして家を出るのに、なぜか遅刻してしまっている・・・。

そんな人間が業務はバリバリこなし、ご飯もモリモリ食べて、帰りにはジムに寄って帰れるぐらい元気です! というような状態だったら、「あいつはやればできるヤツなのに、朝の遅刻癖だけは治らない」と、なんだか「サボってるやつ」みたいな評価になってしまうわけですよ。

・・・これが、先天的か後天的かはさておき、実際にそういう状態になっている人たちがいて、かつ現代社会ではその部分への理解が及んでいない状態である、ということなのです。

職場のポンコツ社員は果たしてサボっているのか?

この本を読み始める時と前後して、妻の職場に新しく入って来た社員の方の話を聞きました。

その方は業務内容をしっかり理解しているんですが、どうにも作業スピードが”常人では考えられないほどに”遅いそうなんです。
どれだけ注意しても、どれだけ「わからなかったらすぐに聞いてください」と促してもダメで、のんびり仕事をして一日を終えてしまう、と。

もしその人に指がなく、キーボードを打つのにも時間がかかるという「見た目での不自由」があれば、おそらく同僚たちも「仕方ないよね」という風潮になっていたと思います。
でもそうではなく、見た目には健常だし、会話も普通であるのに、なぜか作業スピードがめちゃくちゃに遅い。

結果、職場での評価は下がる一方。
同僚たちもどうにかできないものかと思案するも、ストレスが溜まってしまっているという状態なのだそう。

これがもし「やりたくてもできない」という状態で、本人もその自覚がないだけなのだとしたら??
この理解が双方にないことで、お互いに不幸になっているとは言えませんでしょうか。

世の中は健常者と障がい者の2つで区別されるのか?

本書を読んでいて感じたことの一つに、「じゃあ、普通って何だ??」というところがありまして。
たとえば

問題を直視したらその問題を解決する行動すらできなくなってしまう

ため、「問題を先延ばしにする」という選択肢を取る貧困者の話が載っていたんですけども、これの軽い症状が僕にも当てはまるんですよ。

顧客からの問い合わせメールが来ていた際、本来であればすぐに開封して返信してフィックスさせる・・・というのが最善とわかっていても、ちょっと元気がない時などは「今は開封できない」と思って後回しにしちゃうんですね。
なぜならそのメールの内容が酷いクレームだったりした場合、脳のリソースをそれに奪われてしまって、後ろに控えている仕事にも影響してしまうからです。
(だったら後ろの仕事を全部終えてから問い合わせを開いた方が効率的なのだ)

また、脳障害を持つ方にとっては

未来における不確定な「かもしれない」の不安こそは、最も直視が困難かつ、判断力をごっそり奪う主犯

などと書かれていましたが、これも僕に当てはまります。
将来の不安について考えている時には他の何事も手につかなくなってしまったり、楽しいことも楽しくなくなってしまったりするので。

さらには依存の話ですね。
脳障害を患うと近親者に依存しがちになるというデータがあるそうなのですが、、、僕はどこに行くにせよ、何をするにせよ、妻が一緒についてきてくれるとすごく心強いというのがあって。
それだけでなんでもできるようなパワーを得られる反面、同じような場所だったとしても一人で行かなければならない場合などはとことん苦手というか、、、弱者になり果ててしまうのです。

で!!

じゃあ僕はコレ、軽い脳機能障害を発症しているのか?っていうと、わからないじゃないですか。
実はみんな多かれ少なかれこういった症状を抱えていて、それがたまたまうまくいっている方の人を健常者と呼び、あるボーダーより下の人を障がい者と位置付けているだけなのかもしれないよなと。

ある一定のラインで「健常か否か」がはっきり分かれるのではなく、その濃度が濃いか薄いかというだけなのではないでしょうか。
だからある日突然、脳の機能障害であると診断されるかどうかはさておき、いつも通りのことが出来なくなる可能性があるのではないか、と。

理解が必要である

そのため・・・冒頭でも書いた通り、これは世の中の全員が「理解」すべきことなのだと思うのです。

最近ようやく境界知能への認知が広がってきていると思うんですよ。
「世の中にはケーキを三等分できない子がいる」というような感じで。

「言った話を理解できない人がいる」、というのは僕も生きていくうえで目から鱗ものの発見でした。
そうか、世の中の人がみんな自分と同じような考え方をできるわけではないんだ、って。

だから代金引換の荷物を受け取らないだとか、重い罪だと言われながら闇バイトに参加をする人たちがいるんだなと。

でも今後はその理解のレベルをさらに深めて、「それは脳の機能のせいで本人の努力の問題ではない」ということや、「自分もそうなる可能性がある」ということも知っていかなければならないんですよね。

これを世の中の全員が(教科書で習うレベルで)知ることになれば、「あの人はちゃんとしてるけどスケジュール管理だけ(脳のせいで)できないんだね」っていう風に納得できるようになり、正当な評価を下せるようになるのではないでしょうか。

ちょっと前に境界知能であると自称する女性の動画を観たんですよ。

この方はそれを受け入れたことでだいぶ生きやすくなったという旨の説明をされていたんですが、まさにコレだと思っていて。

要は「賢いから偉い」とか「IQが低いから見下される」というようなことがなく、みんなが自身の状態についてしっかりと把握して、それぞれが”できること”を全うしていければ、それが一番(自身も他者も)平和なんじゃないかと。

というわけで、脳の機能についての理解をもっともっと、国レベル世界レベルで深めていかなければいけないと思うのです。

無理である

・・・が!!!

やっぱり、実際問題、「誰がサボっていて、誰が障害なのか」なんて見抜くことは無理なんですよね。

また、「脳障害だから許される」となってしまうと、健常者が損をする仕組みになってしまうし。
じゃあ平等に「成果に対してのみ評価をする」というような世の中であれば、たまたま健常者としていられる人が得をする仕組みになってしまうし・・・。

たとえばね。
飲食店にコース料理30人分の予約が入ったとしますよ。
前日までに食材の仕入れやら準備やらをして、いざ当日を迎えたらドタキャン。連絡しても繋がらず・・・みたいなことがあった場合。

これをやった人が「脳に問題があったので許してあげてね」って言われたらどうでしょうか??
理解できたとしても「なら仕方ないか!」とはなれないというか・・・。

じゃあその損失は誰が補填してくれるの?って話になってきますよね。
(現状、殺人すらも精神鑑定結果次第では無罪になるんですけどね・・・)

なので結局のところ、自分もいつそういう状態になるかはわからないけれども、「そうなった時にはハンデを抱えて生きていく」というリスクを背負ったまま、やっぱり脳機能のせいでポンコツ扱いされている人を「自己責任である」と切り捨てて生きていく世の中を受け入れていくしかないのかな・・・と。ここでもまた絶望したのでありました。

おわりに

そんな感じです。

まぁ、なんだ・・・とにかく読後も「どうすればいいのか」の答えはでないまま、読んでしまった(理解してしまった)人だけが後味の悪い想いをすることになる現状ではありますが・・・それでもやっぱりみんな知っておくべき内容だと思います。いいから読め。

前にホリエモンが「ベーシックインカムを導入しろ」って言ってたのは、結局のところこういうことが根底にあったのかもしれないなぁ・・・なんて思ったり。

追記

学校の勉強はそこそこできる、友達付き合いも悪くない我が息子くんが、何度「前日のうちに明日の準備をしておけ」と言われても当日の朝になってランドセルをひっくり返しているのも、もしかしたら脳機能の問題かもしれんよなー。

   

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