イームズチェアのリプロダクト(ジェネリック)品を買った話。
2020/05/05
ハーマンミラー社が販売する、チャールズ&レイ・イームズデザインのシェルチェア。
駅の椅子のヒントにもなったとかいうこれ。
誰しも一度は欲しいと思うものでしょう。
僕も例に漏れず、サラリーマンを辞めたぐらいの時からずっと欲しくて、
「いつか大金持ちになったら自分へのご褒美として買ってやろう!」
と思っていました。
でもあくる年もあくる年も大金持ちにはなれず、ついにリプロダクト品に手を出してしまったのです。
リプロダクト品は悪なのか
僕が買ったのはDSRという商品の、ヤフーショッピングで販売されていた”ジェネリック”表記のもの。
一脚4,480円でした。
本物(ハーマンミラーの物)を買えば数万円します。
ここまでの価格差がある商品だと、ユーザー目線で考えれば”どうしても本物が欲しいという人以外は”リプロダクト品で十分でしょう。
一時期は粗悪なものが溢れていたみたいですが、僕が買ったものは座り心地もなかなかいいです。
もう2年は使っているけれど何ら問題ありません。
それにハーマンミラーの物だって、本物だというのはいわゆる「イームズチェアである」という部分だけで、材質も厳密には当時の物とは違うわけですよね。
そう思うと、何が本物で、どこに価値があるのかがわからなくなります。
・・・ただし、これはあくまでユーザー目線で観た時の話。
意匠権が切れてるからOK?
そもそもこういったリプロダクト品が溢れている背景には、イームズチェアの意匠権が切れている事が関係しているんだそうです。
これは薬のジェネリック品と同じ。
ある一定の期間を過ぎた商品って、その独占的な使用権が失われるんですよね。
ディズニーの古い映画なんかが100円ショップで売られているのもこの関係です。
要するに法律的には権利が切れているから第三者が勝手に使っても問題ない・・・ということ。
でもこれって、デザイナーなど製作サイドにしてみたら迷惑な話ですよね。
だって何にもプラスにならなさそうだし。
・・・そういうわけなので、本来ならデザイナーやその家族にも収入が行くようなルート(正規品)で購入する事が正しいと言えるでしょう。
むしろ、お金がある人はぜひそうしてほしい。
世の中の流れってのはなかなか変えられない
ただ、世の中には「民衆の意思の流れ」みたいなものがあって、いくら正しくないことだったとしても、それが求められる場合というのがあるんですよ。
で、それは個人や一企業程度に変えられるようなものじゃない。
結局意匠権が切れた物が世の中にリプロダクトとして広がる背景としては、「世の中の人がその物の価値をその程度にしか考えていない」というところにあるんじゃないかと思うわけです。
ディズニーの名作映画は確かに名作だし、あれがあったからこそ今のアニメがあるというのもわかる。
だけれど、「今、あの映画に数千円の価値を見出せるか?」と言われたら・・・「だったら最新の映画が観たい」と思っても仕方ないのではないでしょうか。
同様にイームズチェアやレスポールギターなんかは「デザインへのリスペクト」は当然あるものの、民意は「でももうこういったデザイン自体がパブリックだよね」って感じかなと。
※パブリックであるとは言ってない
だから、同じ形で安い物なら、それでいいって僕も思ってしまうし、それを求める人がいる限りはリプロダクト品が世の中からなくなることはないんでしょう。
おわりに
というわけで、「リプロダクト品は、デザイナーから見たら悪でしかない」けれど、もっと大きな流れで見れば簡単に悪と言って捨てられるようなものではないのかなと思った次第です。
なんだろう、大雑把に言ってしまえば「多くの人が求めることこそが正義」みたいな感じでしょうか。正義ではないけれど。
特にインターネットが普及して、民意は表に溢れ出るようになりました。
そんな時代だからこそ「多くの人が求める流れには、ルールが追いつかなくなる」というような感覚・・・ですかね。
だからまぁ、大手を振って「リプロダクトいいよ!安いし、本物買うの馬鹿だよ!」とか言うつもりはないけれど、多くの人が求めてるんだし、許してね・・?みたいな感じで僕はリプロダクトを使い続けていきそうです。(お金持ちになれるまでは)
追記
リプロダクト品だからか、僕の体重が重すぎたのか・・・背もたれによりかかり過ぎたのか、購入から3年ぐらいで座面と背もたれの境らへんから割れてきました。
安物買いの銭失いとはこのことだ!
2020/05/05