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Gretsch ROC JET(グレッチロックジェット)について。歴史やシェイプ、派生モデルなど。

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      2023/08/08

※以前、違うドメインのブログに載せていた記事ですが、そちらのドメインの期限が切れてしまったため、もったいないのでこちらへ移動・加筆修正しました。

Gretschの素晴らしいギター「ROC JET」についてのまとめです。

1967年7月31日にGretschブランドがBaldwin社に買収されてから2年後の1969年。
低迷を抜け出す為の打開策に、Duo-Jet(当時はダブルカッタウェイ)のリプレイスメントモデルとして、シングルカッタウェイの新しいジェット・シリーズが生まれました。

それが「Gretsch ROC JET」です。

50年代初頭にあったRock Jetではなく、”k”が抜けた「Roc Jet」。
70年代らしい、とても魅力的なエレキギター。

この時代(70年代)のGretschは非常に低迷しており、生産数も少なければ情報も少ないこのRoc Jetよ・・・。
(しかも各所で書かれている情報が違ったりするからたちが悪い)

そういう意味も含めて70年代のGretschは最高に面白くてカッコいいです。

シングルカッタウェイは当時のGibson Les Paulモデルが”オールドギブソンの懐古”ということで取り入れたマーケティング手法を参考にしたのだそう。
当時の経営難がそのまま表れているような感じですね。

いくつかの情報源を基にROC JETについてまとめてみました。

ROC JET 各年代ごとのモデルについて

ROC JETのいくつかのモデルを各年代ごとに解説します。

ROC JET 1st Generation

Porsche Pumpkin 6127

Porsche Pumpkin 6127

はじめてこの世に生を受けたロックジェットは1969年モデルの「6127 Porsche Pumpkin Model」と、「6130 Mercedes Black Model」の2機種でした。
※69年からのモデルとされていますが、手持ちの資料では70年のフライヤーが最古。

名称は「ROCJET」とされることがありますが、正確には「ROC JET」。
ROCとJETの間にスペースが入ります。

ボディはオールマホガニーで、トップのみラッカー塗装。
“完全なるソリッドボディ”と謳われました。
(※72年式以降はセミ・ソリッドだったので、69年当時もそうだった可能性あり)

スーパートロンII(Super’Tron II)ピックアップを2機搭載し、それぞれのピックアップにボリュームとトーンが配線されています。
セレクタースイッチでフロント、リア、ミックスが選択でき、出力前にはマスターボリュームがついている仕様。

※ちなみに手持ちの資料によると、スーパートロンIは「60年代後期~最初期の70年代ジェットモデルに搭載」という記載があるので、最初のロックジェットはもしかしたらスーパートロンIだったかもしれません。

エスカッション(ベゼル)は裏面がシルバーで塗装されたプラスチック製のもの。
グレッチでお馴染みのアレですね。

G-カットアウト(G-ホール)テイルピース、メタルコントロールノブ、スペースコントロールブリッジ搭載。

ピックガードは丸いシェイプ(60年代のWhite Falconに搭載されていたような形状)に、黒文字で「Gretsch」。

ネックはエボニーの指板に、半月タイプのポジションインレイ、22フレット+ゼロフレット仕様。

ヘッド形状はデュオジェットのようなスモールタイプで、”Roc Jet Model”と刻印されたメタルプレートが配置されていました。
※メタルプレートは71年モデル後半には外されていた模様

またトラスロッドカバーもGibsonのレスポールモデル同様、ヘッド側についています。

ヘッド裏にはシリアル表記なし。

ボディ裏側に3点のプレートがあり、コントロール部にはそこからアクセスできるようになっていました。

ROC JET 2nd Generation

wa

Walnut 7613

Roc Jetは1972年モデルで大きな変化を遂げます。
ポルシェパンプキンのモデルナンバーが7611に、メルセデスが7610に変更されました。

同時にカラーバリエーションモデルとして、Jet Fire Birdの後継機種となる7612 Cherry Red Modelと、$30分の高級機種になる7613 Walnut Modelが追加されます。

Walnut Modelはそれまでジェット・シリーズの特徴であったニトロン仕上げではなく、マホガニーボディにウォルナットステイン仕上げという仕様。
(ブラウンカラーと呼ばれることも。)

1972年モデル(おそらく1972年後半)からの2nd Generationは諸々の変更により、初代よりもさらに70年代グレッチを彷彿とさせてくれる仕上がりになっています。

ヘッドシェイプが大きくなり、メタルプレートが外されました。

ブリッジはスペースコントロールブリッジからアジャストマチックブリッジに変更。

ピックガードは70年代のWhite Falconのような四角いフォルムに変更となっています。

ピックアップもスーパートロンが新しいタイプのものになり、ピックアップカバーはフィルタートロンのような物から、ハイロートロンのような半オープンタイプに。

エスカッションベゼルも透明のプラタイプからメタル製のフラットなものに変更されました。

(いずれも製造年が72年4月~6月の間に変更されていたようです)

また、72年後半からのモデルではヘッドについていたトラスロッドカバーがネックのボディ側背面になり、もともとボディ背面にあったコントロール用のキャビティが廃止されています。
つまり、この頃のモデルのボディ背面にはトラスロッドカバーのみ存在している状態でした。

コントロールパネルがないことからもホロウボディであることがわかりますよね。

※ちなみに1975年モデルあたりからボディ裏のコントロールパネルが復活。ただし初期の3点プレートではなく、1点+TRCという仕様。
ヘッド裏に刻印されていたシリアルも、コントロールパネル内に記載されるようになりました。

初代ロックジェットを象徴するボディカラーのポルシェパンプキンは1974年で廃止され、1977年には残り3モデルもマイナーリニューアル。
その後、78年の3rd Generationの登場をもってブラック以外は全て廃止されることになります。

ROC JET 3rd Generation (Final)

Black

Black 7611

1977年に発表された最後のロックジェットは大幅な変更が加えられました。

型番は74年まで2nd Editionのパンプキンモデルに使われていた7611が当てられています。

ピックアップがディマジオのハムバッカーに変更され、G-カットアウトテイルピースとアジャストマチックブリッジが廃止される代わりにバダスブリッジが搭載されました。
また、ピックガードの形状が独特な”スクウェアオフ”というシェイプに変更になっています。

そして指板はローズウッド・・・と、ボディシェイプ以外の見た目がガラッと変わってしまった感じですね。

このブラックモデルが79年まで製造されて、ロックジェットの歴史は終了です。

※81年製造モデルがあるとの話も聞きましたが、当時のオーダープライスリストには80年の時点ではラインナップされていませんでした。

ROC JETの関連モデル

ロックジェットの関連機種としては、74年登場のCountry Rocや、73年の問題児ROC II(Super Roc II)などが挙げられます。

76年にはROC I(7635)、Super ROC(7640)という機種が登場しており、シェイプこそ違えどROC IIに搭載されていたようなコントロールプレートがあるなど、後継機種と言えるのかもしれません。
※でもなんでROC IIが先に出てからのROC Iなのかは謎w

また、日本のGrecoがRJ-85というロックジェットのコピーモデルを作っています。
完成度(というか模倣の精度)は低いものの、こちらもなかなか愛らしいシェイプで憎めません。

Country ROC

Country ROC 7620

Country ROC 7620

ROC JETをベースにしながらも、「最後のRound Up」と呼ばれるようにウェスタンな装束をしたとてもカッコいいギターです。

Country ROCの親モデルである「Round Up」は歴史も古く、1953年に亡くなったハンクウィリアムズがそれまでに築いたカントリーミュージックの人気(と、カントリーミュージックのギタリスト)に真っ向から立ち向かうべく、ウェスタンな装束をまとって1954年初頭にSilver Jetと共に登場したギターです。

「Round Up!」と言えば、ウェスタンカントリーな物にはよく命名されている言葉ですよね。
もともとはカウボーイが家畜を集める時の群れを追い回す様が語源で、「集めようぜ!!」みたいな意味らしいです。

意味合いはさておき、ラウンドアップと聞くと、なんとなくジャンバラヤのようなウェスタンカントリーな曲を思い浮かべられるのはそれだけその言葉と印象が結びついているということでしょう。

そんなRound Upが登場してから実に20年後の1974年、当時ROC JETが$550で展開されていたラインナップに$650というさらに高級な機種としてCountry ROCは登場しました。

基本的なスペックはROC JETと同じです。
違う点は、主に見た目。

まず、パーツがゴールドカラーで統一されているところと、ウェスターンなモチーフが多用されているところが違いますね。

ヘッドにはホースシュー(馬の蹄)のインレイが入り、ポジションマークは牛やサボテンなどウェスタンなデザインのインレイ。
テイルピースもベルトのバックルのようなものだし、ピックガードにも牛のデザイン。

そしてボディサイドをぐるりと皮で出来たウェスターンモチーフが打ち付けられているという仕様です。

忘れてはいけないのが、牛の焼き印をイメージした「G」のロゴがボディトップに焼き付けてある点。
※例によってパーツはまちまちで、ベルトバックルが上の画像のようにカウボーイモチーフではなく、牛さんマークのバージョンがあったり、ピックガードも「Gretsch」って書いてあるものがあったり、ヘッドにホースシューがないものなんかも確認できました。

Country ROCは78年10月までのプライスリストでは販売が確認されましたが、79年には姿を消しています。

最後の、と言われている通り、これ以降でカントリー系のジェットに新しいモデルが登場することはありませんでした。
(ラウンドアップのリイシューモデルを除く)

初代Round Upの子供のような存在であり、ROC JETの弟的存在。
余談ですが、Round Upのモデルナンバーは6130で、初期メルセデスROC JETと同じものが使われているのもなんだか繋がりを感じてしまいますよね。

ROC II

ROC II 7621

ROC II 7621

ROC JETの派生モデルとして、ここまでの問題児がいますでしょうか。
Gretschギターの中でもとにかく資料が少ない一本です。

参考資料となるオーダープライスリストでは、73年10月に$550で掲載されるものの、74年6月には既に載っていませんでした。
それ以前の73年5月にも名前は確認できません。

ということは、最大でも73年4月~74年5月の一年間しか公式に販売されていなかったことになります。
すごい希少な一本かもしれないですね。

フォルムを見ると、とても愛らしい存在に思えてきます。
というのも、なんとなく最終形態のROC JET(3rd Generation)とSuper Axeの中間の様なデザインに見えませんか?(イラストだけれどもw)

ロックジェットをさらにスッキリさせたようなこのデザイン、たまんないっす。

ちなみに73年のカタログでは「Super ROC II」という名称で載っていました。 このあたりも「Super Axe」への系譜を感じずにはいられませんね~。

price7621

ROC IIのスペックは以下の通り。

エボニー指板+半月状ポイントマーカー、22フレット+0フレット仕様。
トラスロッドカバーはネックのボディ側。
マホガニーソリッドボディ、ダークレッド(バーガンディチェリー)仕上げ。
フィルタートロン2機搭載。
テイルピース一体型ブリッジ。(当時のフライヤーから見ると上記イラストのようなものでしたが、これ以上の情報なし)
ジャンボフレット。

なんとなく70sのフェンダーを彷彿とさせる感じ。

そして極め付けの、楕円形プレート+4コントロールノブ+2セレクター。
(参考画像では1セレクター+アウトプット端子のものしか見つからず)

4ノブはボリューム、トーン、ブースト、ディストーション。
そして2つのセレクターが「レギュラー、デュアル、スーパーサウンド」のスイッチと「レギュラー、ディストーション」のスイッチという仕様。
もちろんアクティブ回路。

※余談ですが同時期に採用されたという1973 StreamLinerのノブは”Treble, Bass, Timber, High”という4つでした

ちなみにセレクトスイッチで選択できるスーパーサウンドがどんなものだったのかというと、

High degree of treble booster for “screaming” rock sounds.
Mixed with that Great Gretsch Sound, it gives new dimensions to your playing.
(プレスリリース原文まま)

とのこと。

ギタリストに悲鳴のようなロックサウンドで新しい扉を開けてくれるはずだったんですが、多くのギタリストに「No thank you」と言われてしまったというすごいやつだったそうですw

当時の事を考えると、それがとてもハイセンスで最先端だったんだと思うんですけどね~。
70年代前後って、そういうところがカッコいいです。

実機を触ったわけではないので何とも言えませんが、おそらくこのギターもソリッドと言いながらセミソリッドだったんでしょう。
そこにフィルタートロンが載っているわけで・・・なかなか洒落た音が出たんじゃないでしょうか。

ボディカラーはバーガンディチェリー。
このカラーリングもROC JETのWalnutからのAtkins Axeあたりの流れを感じさせますね。

追記

Super SoundはTwo Guitars in Oneということで、ギターコントロール側でリードとバッキングなどが切り替えられるような画期的な機能だったそうです。

しかもプロギタリストの提案によって生まれたとのこと。

「他のギターのトーンコントロールのようにトーンを破壊せず、高音域をブーストさせる」という宣伝文句もあり、試してみたくてウズウズしちゃいます。

ROC JET Model number to model name

  • 6127 Porsche Pumpkin (1969-1972)
  • 6130 Mercedes Black (1969-1972)
  • 7610 Black (1972-1977)
  • 7611 Porsche Pumpkin (1972-1974) / Jet Black Model (1977-1979)
  • 7612 Cherry Red (1972-1974) / Red (1974-1977)
  • 7613 Walnut (1972-1977)
  • 7620 Country ROC (1974-1979)
  • 7621 ROC II (Super ROC II) (1973-1975)

参考資料

今回の記事を書くにあたって参考にさせて頂いた書籍を以下に記します。

特にど定番の50 Years Of Gretsch ElectricsとThe Guitars of the Fred Gretsch Companyは重宝しています。

また、The GUITAR 2007年10月号はグレッチマニアのギタリスト、ランディ・バックマン氏のコレクションをThe Gretsch Museumとして紹介していて圧巻です。

オーダープライスリスト等はこちらを参考にさせていただきました。

Gretsch’s Lost Weekend

   

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      2023/08/08

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