ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団を観た感想
2023/08/08
息子と一緒にドラえもんの映画「新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ天使たち~」を観ました。
実は1986年に公開された旧作「のび太と鉄人兵団」は僕が映画館で初めて観たドラ映画で、なかなかに思い出深い作品でして。
そのリメイク版というので楽しみ半分、「思い出を壊されるんじゃないか」という不安半分といった感じで観始めたのですが・・・なんのことはない、ちゃんと面白い作品でした!!
というか、ドラのリメイク映画って恐竜、大魔境、魔界大冒険・・・と観てきましたが、結構どれもいい感じなんすよね。
宇宙開拓史と日本誕生もしっかりリメイク版観ないとなー。
鉄人兵団は旧作と大筋は同じながら、自然な感じでディテールの改変があって、それがうまい具合にストーリーの質を現代版にアップデートさせていたんじゃないかと思います。
あとは作画のクオリティが格段にアップしててすごかったです。
ま、そんなことを感じました!というのを、ネタバレ含みつつ、もうちょっと↓にダラダラ書いていきます。
新・鉄人兵団、ここが良かったじゃん!
新・鉄人兵団を今さら観て・・・「良かったじゃん!」と思える部分はたくさんありました。
とにかく絵が綺麗になってた
何よりも一番「すげえええ!」って思えたのは作画面ですね~!
とくにザンダクロスのディテールとか、リルルが鏡面世界に作る基地とか・・・1986年の技術では作れなかったような表現になっていたと思います。
このあたりは日本のアニメ業界というのが30年間積み重ねてきた努力の結晶というか、そういう凄みを感じました。
逆に言うと、今から30年後ぐらいにさらなるリメイク版が作られたとして、これを超えられるのか!?というのがまた楽しみだったり。
リルルも超絶可愛くなってた
鉄人兵団と言えば、ピンクの髪、緑の目、長身の物憂げなお姉さん・・・リルルですよ。
しずちゃんすら見惚れる美貌の持ち主なわけで、やっぱ小さいころに見た映画でも「リルルええなぁ」と思っていた(と思う)んです。
それが!!
今回のリメイク版リルルを観ちゃうと、当時のリルルが野暮ったく見えちゃうんですよねえ・・・それぐらい今回のリルルは可愛かった。
ただまぁ・・・どっちも原作のリルルとはちょっと遠いような感じもするかなぁ。
なんだかんだ原作のリルルが至高です。
ピッポという存在
今回の映画で、原作や旧作と明らかに違う点として「ピッポ」の存在が挙げられます。
旧作だとドラえもんは容赦なくジュドーの頭脳を改造しちゃったじゃないですか。
でもリメイク版では「無理矢理改造するのは可哀想」つって、ジュドーを可愛らしいヒヨコ姿の「ピッポ」に変身させちゃうわけですよ。
※それは可哀想じゃないんかい!!!
で!
何が素晴らしいって、そのピッポの心を成長させることによって、結果的にザンダクロスを味方につけることになったというところ!!
これが本当に良かったと思います。
時代的なところもあったので今と同じような感覚では語れないと思いますが、旧作の方はやや人権無視というか、選民思想、マッドサイエンティスト的な・・・ちょっと人間目線に寄りすぎた対処だったんですよ。
(子供向け映画だからわかりやすい方がいいんだろうけど)
でもリメイク版は相手の意見、考え方も思いやった上で解決することになりました。
これは本当に「良い改変」だったと思います。
※「ピッポだと?原作レイプもたいがいにせい」・・・と思ってる方こそ是非観てほしい、、、
最終局面も素敵な改変!!
そしてピッポの成長から自然と繋がるように作られた最終局面の改変・・・これもすごい良かったです。
原作・旧作ではアムとイムのプログラムを、博士の助言を受けながらリルルががっつり書き換える・・・というものでした。
これがリメイク版では、成長したピッポの心=リンクしているリルルの心、これをアムとイムのプログラムに反映させる・・・つまり他人を思いやる気持ちというものを原始の存在から持たせるように作る、という風に変更されてたんですね。
なるほどなぁ・・・!
実際に体験して感じることができた気持ちだからこそ、プログラムなんかではないリアルな感情としてロボットにも組み込むことができる・・・みたいな、夢のある話やないかーーーい!
子供の頃には感じられなかったこと
この映画、子供の頃には「悪いロボットが宇宙からやってきて、ドラえもんたちがそれを迎え撃つ」という目線でしか見られなかったんですが、今回このリメイク版を見た事でよりハッキリと「これは宗教、文化の話だ!!」というのがわかりました。
つまりメカトピアの民というのは、盲目的に自分たちの宗教観に従って行動している種なわけですよ。
地球人とはそもそもの価値観が違うわけです。
僕ら日本人だって日本人の価値観でもって政治や文化を判断してしまうけれど、それが果たしてキリスト教やイスラム教の信者の前でも同じだと言えるのか?というのがテーマになっていたんですね。きっと。
リメイク版ではそれを特に強調するために「労働階級のロボットが歌うことを禁じられている」という設定も追加されていました。
個人的にはピッポがドラえもんに「お前はなぜロボットなのに人間なんかと仲良くしているんだ?」と問うシーンで、ジャイアンが「人間とかロボットとか関係ない」ということを話していたのがすごく胸に刺さりましたね~。
結局はそういう「種」でくくってしまうから差別になる・・・というのをやんわり教えてくれていたのかなと。
やっぱりドラえもんって、今も昔もすごい作品なんやぁ・・・!!!
随所にガンダムらしさ
もともとザンダクロスって「すごく・・・百式です・・・」って感じだったんですけども、リメイク版はそれがさらに「よりガンダムらしい」って感じになってたかなぁ。
まぁ、これは別に良い点でもなんでもないけどw
ガンダムっていうか、80~90年代のロボットアニメっぽさ?
あえてそういうところを意識してあって、途中ワンシーンをカットしたらドラえもんとは思えなかっただろうなぁ。
劇中歌の雰囲気も、なんかZガンダムとかマクロスとか、あの頃の主題歌を思い出しちゃったり。
ちょっと残念だった点
さてさて、概ねすごく面白かった「新・鉄人兵団」ですが、ちょっとだけ残念に思う部分もありました。
しずかちゃんのビル破壊シーン
子どもの頃に見た鉄人兵団で、忘れることができないほどに衝撃的だったシーンは・・・しずかちゃんがビルにビームを撃ち込んでしまったところです。
「このボタンは何かしら?」
「あ、それ?なんでもないの」
「あら、そうなのー」
みたいな会話をしながら何気なく押してしまったボタンが、まさかのビーム発射ボタンで。
目の前でビルが崩れ落ちるのを観て泣き出してしまうしずかちゃん。
リメイク版ではこのシーンにたっぷりと尺が取って合って、すごく丁寧にビーム発射が描かれていたんですが・・・個人的にはちょっと不満でした。
なんていうかこのシーンって、もっと「何気なく押してしまったボタンがとんでもない事態を引き起こしてしまった」というのを、日常の「自然」の延長に描いてあったと思うんです。旧作版では。
それゆえの恐ろしさというか・・・観ているほうも度肝を抜かれたというか。
リメイク版だと「あ、なんかミサイルか何か撃ちそう」っていう予感がしちゃったんですよねえ。(まぁ結末を知ってたから、というのはあるけどもw)
でもリメイク版で、「崩れゆくビルを眺める三人の構図」っていうのはすごく胸を締め付けられる感じで良かった・・・。
・・・というか、ドラえもんの映画ってしずかちゃんに酷なことさせすぎですよね。
あんなの、、、いくら鏡面世界だからってすごいトラウマになると思う。
撃って!は旧作映画が最強
もう一つ、鉄人兵団で忘れられないシーンとして思い出されるのは、終盤でのび太が地下鉄の入り口にいるリルルを発見するところ。
兵団のところへ行かせまいと銃を構え「行くなら撃つよ」と脅すのび太に対し、リルルは「撃って!」と訴えるわけです。
これ、原作だとここだけ切り取った重要なシーンとはなっておらず、セリフだけ「うって!!」と書いてあったんですが、旧作映画ではリルルがホッとしたような笑顔で振り返ってから「撃って!」って言うんですね~。
なんていうか、鳥肌が立つシーンなわけですよ!
リルルとしてはその後の説明でもあったとおり「人間を奴隷にするのはいくない」「でも祖国も裏切れんばい」っていう背反する心で苦悩していたため、きっと他人(のび太)に結論を委ねたかったんでしょう。
撃ってくれれば自分は兵団のところへ報告に行かなくて済むため、人間もロボットもどちらも裏切ることなくいられたわけです。
それゆえの、笑顔+「撃って!」が本当に秀逸だったのですが・・・、リメイク版ではこれが無かったのがちょっと残念でした。
ミクロスどこいった
原作、旧作では(ギャグ的な要素で)重要なポジションにいたミクロスが、リメイク版ではピッポ登場あたりを機に全く出てこなかったのが寂しかったです。
でもまぁ・・・ピッポという新キャラを登場させたことで、やっぱミクロスがいたらゴチャゴチャし過ぎちゃったかな。
旧作ファンならすんなりと状況を整理できて「ミクロス×ピッポ」みたいなバトルも楽しめたかもしれないけど、あくまでターゲットは「リメイク版で鉄人兵団が初見」という人と考えたら・・・いなくて正解だったのかも。
おわりに
というわけで、新・鉄人兵団を観た感想でした!
まぁ、本当に、旧作ファンもまだ観たことがない人も楽しめるドラ映画だったんじゃないかと思います!
普段はドラ映画が嫌い(テレビ版が大好き)な5歳の息子もガッツリのめりこんでましたし!
こうなると実家に置いてきちゃった原作本をもう一回読み直したいなぁ・・・!!!
2023/08/08