手塚治虫「罪と罰」を読む!原作を読めない人向けのダイジェスト版ドストエフスキー
2023/08/08
高校生の頃だったと思いますが、手塚治虫先生の漫画に大ハマりした時期がありまして。
「面白い面白い!」とあれこれ買っていたものが実家に眠っています。
で、今回そんな中から「罪と罰」を持ってきまして、数年ぶり(数十年ぶり?)に読みました。
「罪と罰」はドストエフスキーの代表作で、それをコミカライズしたものが手塚版「罪と罰」です。
といっても僕は原作の方を読んだことがなくて・・・今回たまたま「原作でこのシーンはどんなニュアンスだったんだべな」っていうのを調べてみたところ、手塚版はある意味「手塚的ダイジェスト版・罪と罰」だったことを知ってショックを受けましたw
ただね・・・
それでWikipediaや他の人の感想などを参考に原作の雰囲気をさぐっていたんですけども、やっぱり難しいんですよ。
そもそも活字で当時のロシア帝国の情景を思い浮かべるのも難しいうえに、僕らには馴染みのない「〇〇ニコフ」とか「〇〇ニコワ」とかいう名前でしょう?
こりゃたぶん話を理解する前に頭ががこんがらがって離脱する人もいたんじゃないかなって。
そう考えると、ディズニータッチの親しみやすい絵柄で、要点だけを綴ったダイジェスト版っていうのは当時の漫画の読者層(=たぶん子供)にとってはありがたかっただろうなぁ。
僕も救われました。
そんな手塚版「罪と罰」の感想をば。。。
手塚版「罪と罰」を読んだ感想
前述のとおり原作は未読なんですけど、Wikipedia等の情報を参考に相違点を挙げるならば・・・
- ラスコルニコフとマルメラードフは事件の前に面識があった
- ラスコルニコフが殺人に及んだのはソーニャを憐れんでのことだった
- ラスコルニコフが殺害したのはアリョーナ婆さんだけじゃなかった
- スビドリガイロフはマルファの下男ではない
- スビドリガイロフは人民解放戦線の同士を求めてラスコルニコフに接近したわけではない
- 罪の告白をして終わり、ではない
などでしょうか。
たとえば漫画ではアリョーナ婆さんの殺しがあってからマルメラードフ氏と出会い、ソーニャを知り・・・ってなってましたが、そもそものラスコルニコフの動機というのが原作では私利ではなく、ソーニャなど貧しい人を救うためであったようですね。
何が罪で何が罰であったのか??
手塚版を読んだ限りだと、ラスコルニコフの罪というのは「アリョーナ婆さん殺し」に他ならないと思います。
で、罪の告白をしたところで物語が終了するので、罰というのは「そこに至るまでの苦しみ」だったのかなぁ?なんて思ってました。
でも原作だとラスコルニコフはアリョーナ婆さんの妹(善良な人らしい)に殺害現場を目撃されてしまい、ついでに殺害してしまうわけですよ。
そうなってくると話は別で・・・もしかしたら罪っていうのが「何の落ち度もない人間を殺めてしまった」というようなことなのかなー?とも。
まぁ・・・「殺されて然るべき人間を殺めた時に心が痛まないかどうか」というのは、僕は人を殺したことがないのでわかりませんが、、、
(少なくとも、勤勉に生きていた善良な女性を殺害してしまうことがあったら相当落ち込むと思う)
さらにいうと原作では罪の告白の後、裁判によってシベリアへの流刑が決まるわけで。
ある意味それは直接的な罰だったりするのかなぁ??なんて思ったり。
・・・まぁ、そんな単純な話じゃないかw
※ちなみに借金生活やシベリアへの流刑などはドストエフスキー氏本人の体験が作品に生かされている模様
マルメラレどうし、の意味
手塚版では物語のキーマンの一人であるマルメラードフ氏のことを、酒場にいる他の客たちが「マルメラレどうし」と呼んでいたのが印象的でした。
実はこれ、高校時代に読んだ時にもこのフレーズがすごく頭にこびりついていて。
ずっと「マルメラレどうしってなんだろう?」と思っていたんですよね。
※そのせいで大人になるまで名前を「マルメラレドフ」と記憶していたっていう。
「丸められ同士」・・・丸めこまれる同士???
なんでもマルメラードフはロシアで本当に存在する苗字だそうで、マーマレードの「甘い」みたいなところが語源だそうな。
甘い、甘ちゃん・・・。
再婚した奥さんに丸められ通しで、実娘のソーニャを売春婦として働かせなければならなくなった・・・とか、そういうことでしょうか。
※それだと「どうし」じゃなくて「どおし」なんですけどね、、、
言葉選び・表現力の秀逸さ!
あとは手塚先生の言葉選びや表現力といった部分で、これをあえて「手塚版」で読む意味があるんだろうなと思わせられます!
個人的に気に入っているのは(原作にあったのかはわからんけど)ソーニャとラスコルニコフの会話で
ソ:血を止めないと死ぬわ
ラ:ほっといてくれ!死んだってかまわないッ!
ソ:い いけませんわ 死んだら命がなくなるのよ
ってところです。
もうね、当たり前のことを言ってるだけなんですけど、面白いなぁ~って。
ソーニャの真意としてはその後の会話で「どんなにつらくても生きてるのはいいわ」という言葉があるとおり、宗教的なものというか、「生きて何をするのか」ではなく「生きているか否か」というところに価値を見出せているってことなんでしょう。
それが貧しくて生きていて辛かった(きっとソーニャもそうであっただろうと思っていた)ラスコルニコフにとってはとても輝いて見えただろうなぁ・・・。
あとはポルフィーリィ判事との直接対決で、蝋燭の火に群がる蛾を描いたところ。
これがねえ・・・まるでディズニー映画の一シーンみたいで必見です。(小説版じゃ味わえないのだ!)
おわりに
そんなわけで、久しぶりに読んだ手塚版「罪と罰」、クッソ面白かったです。
何度でも読み直したい。
これぐらいの軽いモチベーションで読めるカラマーゾフの兄弟もあれば嬉しいんですけどね・・・(こっちも原作未読)
とりあえず漫画版ポチっといた、、、
2023/08/08