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カラマーゾフの兄弟(岩下博美版)を読む!ドストエフスキー最高傑作を漫画で【講談社まんが学術文庫】

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      2023/08/08

画像は講談社まんが学術文庫「カラマーゾフの兄弟」(岩下博美)より

講談社まんが学術文庫から刊行されている、岩下博美先生の描く「カラマーゾフの兄弟」を読みました!

原作は今から100年以上も前に書かれた、ドストエフスキーの遺作にして最高傑作と言われている小説です。

先日、手塚版の「罪と罰」を読み終えた際、「『罪と罰』と『カラマーゾフの兄弟』はどちらが面白いか?」という議論を目にしてしまい・・・気になってしまったのです。

・・・って、こんなのどっちとも決められないですよね。
カレーとハンバーグ、どちらが美味いか?みたいな話に通ずるというか。どっちも面白いに決まってる。

・・・っていうか、どっちも「罪」と「罰」のお話なんだよな。。。

というわけで、漫画版カラマーゾフの兄弟の感想をば。

カラマーゾフの兄弟はどんなお話だったのか?

「で、結局どんな話だったの?」と問われても、一言では言い表せない作品だったんじゃないかと思います。

ある人はサザエさんやちびまる子ちゃんのような「家族物語」と言うし、ある人は「父殺しの犯人を捜すミステリー」だと言うし。

「ドストエフスキーは作品を通じて、こういうことが言いたかったんだ」と断言できるようなものでもないのかなと。

僕が思うに、このお話というのは「カラマーゾフという一家の兄弟がいた」という(作中での)史実がある、というところだけが全ての読者に与えられていて、あとは読み手が誰の何に共感したのか?そこからどう思ったのか?というのは自由なんですよ。

だから、強欲ではあるものの誠実だった長男ミーチャに共感してもいいし、現実主義で冷めていながら罪の重さに耐えきれず狂ってしまった次男イワンに共感してもいい。
神を信仰しながらもやや俗っぽく、純真でカワイイ三男アリョーシャに共感することもあるでしょう!

それぞれの物語に問題と終着点があるわけで・・・それらをひっくるめたものが「カラマーゾフの兄弟」だった、と。

・・・そういう意味では本当に「家族物語」なんだろうなぁ。

不死がなければ善行もない

印象に残っているフレーズは、イワンが冒頭で語っていた(そして物語の軸となる)「不死がなければ善行もない」というもの。

もちろんこんな言葉は議論されつくしてきたものだし、いまさら特に珍しいものでもないのだけれど・・・それが100年も前に作中のキャラクターの言葉として発せられていたというのが面白かったです。
逆にいえば僕らは100年以上も「神はいるのかいないのか」みたいなことで悩んでいるわけですなw

個人的には宗教とか神様とかっていうのがあんまり好きじゃないんですけど、このイワンの発言にはハッとさせられるものがありまして、、、

つまり人は「魂の蘇り」を信じているからこそ、生前に良い行いをする・・・というわけじゃないですか。

これすなわち宗教のなりたちというか、要するに宗教・神様っていうのは「もともと野蛮だった人間に、理性を持った行動をさせること」が目的だったってことなんですよね。

もしも宗教がなかったら・・・?僕らは果たして本当に無宗教なのだろうか

こういう思考というのはネット社会が発達した今を生きる僕らの特権かとばかり思っていたんですが、まさか100年以上も前に議論されていたとはね・・・。
(まぁ、イワンもプラトンあたりの受け売りなのかもだけど。。。)

ただ「神がいなければ全てが許される」というのはまた突飛というか。
許す許さないを決めるのは神でも裁判官でもないのでね。

※結局アリョーシャがそこに辿り着いていて、自分の罪と向き合ったミーチャを脱獄させる・・・ってくだりも面白かったなぁ、、、

イワンも結局、神がいるのいないの関係なく、自分が殺人者になってしまうということを嘆いているというのが非常に人間らしく、ドストエフスキーという人はそういうところを書くのが上手なんだなと思いました。(小並感)

カラマーゾフの兄弟は漫画で読んでも良いのか?

さて・・・こういう文学を漫画で読むと「原作版を読んでこそ」という原作厨にネチネチ言われがち。

残念ながら(?)今回の「カラマーゾフの兄弟」もダイジェスト版でしたので、いろいろすっ飛ばされているのは事実です。
また、原作が持つ細かなニュアンスなどはどうしても漫画では伝わらないというか・・・漫画になった時点で漫画家さんのバイアスがかかってしまっているので、これは「真・カラマーゾフの兄弟」とは言えないと思います。
※ある意味、「岩下博美版カラマーゾフの兄弟」なのだ。

ただ!!

バイアスという観点でいうのなら、それはもう翻訳版を読んでる時点で訳者のバイアスがかかってますからね。
ドストエフスキー本人の細かいニュアンスを知るには、ロシア語を学んで「Если Бога нет, всё позволено」とかを読めるようにならんといかんと思うのですよ。

さらにはその時代背景も勉強しないと、ジョークとか言葉遊びとかを100%楽しむことはできないと思ってます。

なので・・・ここらへんはもう自分がどこまで妥協するか??ってところですよね。
ダイジェストにカラマーゾフの外枠を楽しむというので良ければ、全然僕は漫画版で構わないと思ってます。(言うて原作未読だけどw)

岩下博美版は素晴らしいぞ!!!

で!今回読んだ岩下博美先生の漫画なんですが・・・素晴らしいです。

なんかね、ミーチャもイワンも「どっかで見た事ある・・・」って感じのキャラなんですよ。
どこで見たのかはわかんないんだけどw(ミーチャはベルセルクとかで出てきそうだな!)

つまり親しみやすい絵柄で、非常に読みやすいのです。

さらにいうと、キャラクターとその風貌がマッチしているというか。
たとえばミーチャの「元軍人で、ガサツだけど誠実」というのが、あのキャラ絵を見れば一発でスッと入ってくる感じ。

ドストエフスキーの原作は「とても冗長である」と言われています。
カラマーゾフの兄弟も、原作読破組から「もっと要点を搾ってかけたはず」とも。

まぁ、なぜそうなってしまったかというと、当時のドストエフスキーが借金まみれであったこととか、文芸誌連載(ページ数に応じて原稿料が貰える)ということから想像がつきそうなところでして。

(その辺の話は「純文学とは何か!?」みたいな記事にまとめられそうなので、こんど書こうっと)

そうした冗長な部分をダイジェストにし、かつ人物描写なども視覚で解決してくれるという意味で・・・岩下博美版カラマーゾフはすごかったなと!

罪と罰も読んでみようかな。

おわりに

・・・と、まぁそんな感想でした!

とにかく読了時の満足度は高かったです。
原作も時間が許すのなら読んでみたいところ。(やっぱりすっごい面白いんだってさ!!)

そうそう、本当はカラマーゾフの兄弟って「二部構成」だったんですってね。

二部ではアリョーシャが救った少年がテロリストになって・・・とか過激なお話だったみたいですけど、これもしかしたら二部がなかったからこそ最高傑作として語り継がれた可能性もあるのかなw

   

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      2023/08/08

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